独り
ひとり
名詞
標準
文例 · 用例
予が今に理窟を云うの癖があるは此の時代の遺習かと、独りで窃におかしく思っとる。
— 伊藤左千夫 『家庭小言』 青空文庫
それから『独都より』の「リンデン」の作は、作者も云うてる如く、前の歌の淋しい内にも嬉しい親しみのある情調とは異なり、旅情の淋しさと自然のさびれた淋しみとを独りしみじみと味わってる情調が、一句一句の端にも湛うてる。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
茄子畑の事や棉畑の事や、十三日の晩の淋しい風や、また矢切の渡で別れた時の事やを、繰返し繰返し考えては独り慰めて居った。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
(したがつて西洋の詩人たちは、独りニイチェに限らず、グウルモンでも、ジャン・コクトオでも、ボードレエルでも、ヴァレリイでも、すべて皆アフォリズムを書いてる。
— 萩原朔太郎 『ニイチェに就いての雑感』 青空文庫
とにかく僕は、無用のおしやべりをすることが嫌ひなので、成るべく人との交際を避け、独りで居る時間を多くして居る。
— 萩原朔太郎 『僕の孤独癖について』 青空文庫
真に主観的の態度によって、世界を感情の眼で見ているものは、あらゆる文学者の中で、ただ独り詩人あるのみである。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
故に芸術の記号たる「美」という言語は、音楽にも詩にもあたえられず、独りただ美術にのみ冠されている。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫
故に西洋に於ける客観主義の文学は、独り自然派に限らず、すべて主観への逆説であり、内に強烈な主張を持して、外に客観を説くところの、内外矛盾したレアリズムで、言わば「主観を排斥する主観主義」「詩を内にもつ観照主義」の文学である。
— 萩原朔太郎 『詩の原理』 青空文庫