転反
てんはん
名詞
標準
文例 · 用例
横になりはしたがいつまでも寝つかれないで二時近くまで言葉どおりに輾転反側しつつ、繰り返し繰り返し倉地の夫婦関係を種々に妄想したり、自分にまくしかかって来る将来の運命をひたすらに黒く塗ってみたりしていた。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
こうして苛いらしながら七日の間、いろいろのことを考えながら輾転反側しているうちに、かえって私の肉体は日増しに丈夫になっていって、寝室の鏡にうつしてみても平常と変わりがなく、ふたたびもとの人間らしくなった。
— 幻の人力車 『世界怪談名作集』 青空文庫
十月十九日晴、徹夜展転反側。
— 種田山頭火 『其中日記』 青空文庫
それから、顔面が無残な苦痛で引ん歪んでいるにもかかわらず、たとえ十数秒の間でも床上を輾転反側した跡がない。
— 小栗虫太郎 『聖アレキセイ寺院の惨劇』 青空文庫
これは婉転反側して男客を俟つの状に象り、またカワセミと称えたは路傍に待ちいて客人を捉うるの手速きに拠ったのだ。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫
それでもどうにか長靴をぬがせると、主人は曲りなりにも着物を脱いで、寝台をガタビシとやけに軋ませながら、暫らくのあいだ輾転反側していたが、やがてのことに、すっかりヘルソン県の地主になったような気持で、ぐっすり寝こんでしまった。
— または チチコフの遍歴 第一部 第二分冊 『死せる魂』 青空文庫
この美女は夜つぴて上掛の下で輾転反側して、一睡もすることが出来なかつた。
— VECHERA NA HUTORE BLIZ DIKANIKI 『ディカーニカ近郷夜話 後篇』 青空文庫
此時、想世界の敗将気|沮み心疲れて、何物をか得て満足を求めんとす、労力義務等は実世界の遊軍にして常に想世界を覗ふ者、其他百般の事物彼に迫つて剣鎗相|接爾す、彼を援くる者、彼を満足せしむる者、果して何物とかなす、曰く恋愛なり、美人を天の一方に思求し、輾転反側する者、実に此際に起るなり。
— 北村透谷 『厭世詩家と女性』 青空文庫