幽婉
ゆうえん
形容動詞
標準
文例 · 用例
平野に雲の海があるとき、霞棚引けるとき、それ等を敷莚にして、幽婉な寝姿が影となって望まれる。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
その姿の幽婉な揺れ方は、白燃の火焔だけを薪から離して水の上に放ったようでもございます。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
辞世の歌の「限りあれば吹かねど花は散るものを心短き春の山風」の一章は誰しも感歎するが実に幽婉雅麗で、時や祐けず、天|吾を亡う、英雄志を抱いて黄泉に入る悲涼愴凄の威を如何にも美わしく詠じ出したもので、三百年後の人をして猶涙珠を弾ぜしむるに足るものだ。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
庸三は松川のマダムとして初めて彼女を見た瞬間から、その幽婉な姿に何か圧倒的なものを仄かに感じていたのではあったが、彼女がそんなに接近して来ようとは夢にも思っていなかった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
庸三の子供が葉子を形容したように彼女は鳥海山の谿間に生えた一もとの白百合が、どうかしたはずみに、材木か何かのなかに紛れこんで、都会へ持って来られたように、自然の生息そのままの姿態でそれがひとしお都会では幽婉に見えるのだったが、それだけまた葉子は都会離れしているのだった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
その文章が余りにも幽婉なので、あれが好い女だつたら、この手紙も効果があつたらうにて、男の人達が嗤つたものですて。
— 徳田秋聲 『女流作家』 青空文庫
翻つて私達はなまじ古典を崇拝し、秩序ある伝統の教養を受け、その画のやうな象形文字の輪廓、若くばその音律の齎らす古蒼、荘厳、或は簡素、幽婉、微趣のかずかずにあまりに深く薫染し過ぎて来た。
— 愛の詩集のはじめに 『愛の詩集』 青空文庫
仏蘭西の象徴派詩人の作にあるやうな、幽婉な、涙ぐましいこの曲の旋律は、心もち面窶れのした妓の姿に流れて撓やかな舞振を見せた。
— 大正六(一九一七)年 『茶話』 青空文庫