秘室
ひしつ
名詞
標準
文例 · 用例
石で畳み上げた、世にも壮麗厳重を極めた秘室の中には、砂金が一粒、銭が一枚無いのです。
— 野村胡堂 『水中の宮殿』 青空文庫
吉保は、一門一族をあげてこれを迎え、歓楽つきて、秘室、伽羅を焚きこめた屏裡には、自分の妻妾でも、家中のみめよき処女でも、綱吉の伽に供するのを否まなかったとさえいわれる。
— 吉川英治 『大岡越前』 青空文庫
――かくて、楊雄が家に帰らない夜といえば、線香の火と、この小婢の手びきで、頭巾を眉深にかぶった色坊主が、不敵にも、ほとんど一晩おきに、人妻の秘室へ忍び通うという不義の甘味を偸んでいた。
— 吉川英治 『新・水滸伝』 青空文庫
しかしこの――時代の激潮に恟々している名門の二世を自家の秘室へ呼んで、わざわざその脆弱性を甘えさすような歓待や密語をさずけた家康という者こそ――時人はまだ東海の一若将としかこの頃では注意していなかった風だが――まことに油断のならない存在といわねばならぬ。
— 第九分冊 『新書太閤記』 青空文庫
貂蝉といえば、彼が、まだ長安にいた頃、熱烈な恋をよせ、恋のため、董相国に反いて、遂に、時の政権をくつがえしたあの大乱の口火となった一女性であるが――その貂蝉はまだ彼の秘室に生きていたのだろうか。
— 草莽の巻 『三国志』 青空文庫
一切の事、祭司を用いず、やがて北斗を祭る秘室のうちに、帳を垂れて閉じ籠った。
— 五丈原の巻 『三国志』 青空文庫
その爲めに、書籍を集めるための官を設けたことが書いてあるが、これは劉※の説によると、その集める場所は、宮廷の内と外とに分れ、外の方には太常・太史・博士、内の方には廷閣・廣内・祕室に藏書の場所を設けた。
— 内藤湖南 『支那目録學』 青空文庫