左眄
さべん
名詞
標準
文例 · 用例
おぼろげながら、それと察知できても、人々は何かの理由で大事をとつて、いたづらに右顧左眄し、笑ひにまぎらはし、確言を避ける風である。
— 太宰治 『檀君の近業について』 青空文庫
右顧左眄、雄大無比なるこの高原の絶勝を眺めながら湯本へ着いたのが、もう日が暮れて大分間が経ってからである。
— 井沢衣水 『本州横断 痛快徒歩旅行』 青空文庫
両の乳房を右顧左眄て、お丹はなぶり且つ嘲り、「ふむ、大分大きくなった乳嘴にぼっと色が着いて、肩で呼吸して、……見た処が四月の末頃、もう確かだ。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
自己の民族への奉仕をまつとうし、民族芸術としての責務をはたしたうえ、さらに余力をもつて国境を越えて行くなら、それはよろこばしいことであるが、最初から他の民族への迎合を考えて右顧左眄し始めたらそれはすでに芸術の自殺である。
— 伊丹万作 『映画と民族性』 青空文庫
右顧左眄し、周章狼狽した自分たちは、天地も顛動する大きな変化に身をさらわれた。
— 本庄陸男 『石狩川』 青空文庫
「俺はもう心を決めているのだが、兄者人が右顧左眄、家のことを思ったり、大逆になるのを恐れたりして……」「お父上のお心を推し計るとのう」 と、やはり左源太は二の足ふむように、「妹の心根を思いやってものう」「では、最初から云い出さねばよいのじゃ」 と、弟の右源次は歯痒そうに云った。
— 国枝史郎 『あさひの鎧』 青空文庫
「この江戸の地へ帰って来ても、その惻隠の心持ちが、弱気となってわしを支配し、最初の計画を掣肘し――自分自身掣肘し、ああでもあるまいこうでもあるまいかと、躊躇逡巡|右顧左眄、仏心を出している間に、彼奴らいわば長袖者流、結託なして余を弾劾!
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
猿廻しが大した節廻しもなく、さうした場面の抒情的な地の文を謡ふに連れて、葛の葉狐に扮した猿が、右顧左眄の身ぶりをする。
— 折口信夫 『信太妻の話』 青空文庫