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文例 · 用例
少しもう薄暗くなった夕方でも、このまっ白な綿の団塊だけがくっきり畑の上に浮き上がって見えていたように思う。
— 寺田寅彦 『糸車』 青空文庫
薄暗いところで、黒い着物を着てゐるので、顏だけがくツきり現はれて、身體は※物の臭ひの漂ふ中に暈されてしまつた。
— 上司小劍 『石川五右衞門の生立』 青空文庫
ただ、眼を覆いたいうとましさだけがくる。
— 矢田津世子 『父』 青空文庫
太陽は建築物の肩に隠れて、その残照が明るく河面に漂い、油をぬったような空と水との反映を受けて、微妙な紫じみた雰囲気をかもし出し、両岸の家々は平面がぼやけ、輪廓だけがくっきりと際立ち、泊りを求めて帰る大きな荷足船の中からは、細そり煙が立っている。
— 豊島与志雄 『道化役』 青空文庫
両脚の血のめぐりは悪くなって、軽いひきつけがくる。
— 永井隆 『この子を残して』 青空文庫
この月の中旬イルコックはニュージーランド川に一|隊のさけがくだりゆくのを発見したので、毎日あみをおろしてさかんにさけを捕獲した。
— 佐藤紅緑 『少年連盟』 青空文庫
雑沓の跫音だけのような、いつもザワザワと跫音だけがくぐる門。
— 坂口安吾 『街はふるさと』 青空文庫
娘は尖った顔の中でそれだけがくぼんでいる目を大きく見開いたが、全然そこには情熱もなく、物を云う目でもなかった。
— 坂口安吾 『牛』 青空文庫