縺
縺
名詞
標準
文例 · 用例
一説によれば chicane の略で裁判沙汰を縺れさせる「繊巧な詭計」を心得ているというような意味がもとになっている。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
やがて凜とした甲聲『殺せ、殺せ、妾を殺して……こ……この人に罪は無い、みんな妾が惡いのだから』婀娜かしい襦袢の袖が縺れて、男の肩に纏綿る。
— 萩原朔太郎 『二十三夜』 青空文庫
それはもう、疲れしぼみ、悔とさびしい微笑としか持つてはをらぬけれど、それは此の世の親しみのかずかずが、縺れ合ひ、香となつて籠る壺なんだ。
— 中原中也 『疲れやつれた美しい顔』 青空文庫
今来た路の方を振り向くと、峡間の底から、大霧は雪を包んで乱舞を始めている、それは噴火口の底から、硫烟が幾筋も縺れ合い、こんぐらかって、騰上するようである。
— 小島烏水 『槍ヶ岳第三回登山』 青空文庫
細君は、一寸、云いにくげに、舌の根を縺らした。
— 黒島傳治 『武装せる市街』 青空文庫
お前の口は半分明け放たれ、齒並の奧に白苔の生えた舌が縺れてゐた。
— 南部修太郎 『疑惑』 青空文庫
厭やにしん猫を極めてたね……」離れた卓で給仕女達とふざけてゐた醉ひどれ男は、縺れた舌でがむしやらに呶鳴つた。
— 南部修太郎 『霧の夜に』 青空文庫
春の明るい光線を湛へた教室の中には、笑ひの波が崩れ合ひ縺れ合つて、一時に湧き返つた。
— 南部修太郎 『猫又先生』 青空文庫