現身
げんしん
名詞
標準
文例 · 用例
併し幸福といふものが、このやうに無私の境のものであり、かの慧敏なる商人の、称して阿呆といふでもあらう底のものとすれば、めしをくはねば生きてゆかれぬ現身の世は、不公平なものであるよといはねばならぬ。
— 中原中也 『山羊の歌』 青空文庫
ある時は、喬の現身は道の上に失われ鈴の音だけが町を過るかと思われた。
— 梶井基次郎 『ある心の風景』 青空文庫
水にひたす影に於てこそ、もっとも女神の現身をみることができる。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫
五百年間一人も抱かなかった生命の慾望を現身に意識づけたということだけでもわたしたちは幸福じゃないか。
— 岡本かの子 『宝永噴火』 青空文庫
ほのぼのと東へ行くと、月しろの火立に行くと、身ははやも現身はなし、心はや世のこころなし。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
ああ、妻よ、常住むは幻ならず、現身のうつしごころのあはれなり。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
現身の鳥の啼く音のなぞもかく物あはれなる。
— 北原白秋 『雀の卵』 青空文庫
現身の人にてませば、かの人も亦人のごと寂しくましき。
— 北原白秋 『雀の卵』 青空文庫