朝する
ちょうする
動詞
標準
文例 · 用例
五年ぶりに帰朝する御主人をお迎えにいそいそ横浜の埠頭、胸おどらせて待っているうちにみるみる顔のだいじなところに紫色の腫物があらわれ、いじくっているうちに、もはや、そのよろこびの若夫人も、ふためと見られぬお岩さま。
— 太宰治 『皮膚と心』 青空文庫
むす子が巴里の北のステイションへ帰朝する親たちを送って来て、汽車の窓から、たしない小遣いの中で買ったかの女への送別品のハンケチを、汽車の窓に泣き伏しているかの女の手へ持ち添えて、顔も上げ得ず男泣きに泣いていた姿を想い出すと、彼女は絶望的になって、女ながらも、誰かと決闘したいような怒りを覚える。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
先生は子供の時分にアメリカへ行つて、それから十何年の間ずつとあちらで育ち、シカゴの大学で修学して帰朝するとすぐに、此の南海の田舎へ赴任して来たといふことであつた。
— 寺田寅彦 『蓑田先生』 青空文庫
百官 此日 知る何れの処ぞ、唯有り 羣烏の 早晩に朝する。
— 幸田露伴 『運命』 青空文庫
五十四 新座敷の方の庭から、丁字形に入込んでいる中庭に臨んだ主人の寝室を、お島はある朝、毎朝するように掃除していた。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
亜米利加にゐるときクロポトキンの著作などに親しんだことから物の所有といふことに疑問を抱かされたのでありましたが、帰朝するとすぐ英語の教師となつて札幌に赴任いたしました。
— 有島武郎 『農場開放顛末』 青空文庫
いかにも人柄に不似合いな下手な字体で、葉子がひょっとすると上陸を見合わせてそのまま帰るという事を聞いたが、もしそうなったら自分も断然帰朝する。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
大臣もとうとう根気負けがして、注意深くその人のいうことを傾聴するようになったが、その結果としてその人は欧米への視察旅行を命ぜられ、帰朝すると、すぐいわゆる要路の位置についたというのだ。
— 有島武郎 『星座』 青空文庫