雲竜
うんりゅう
名詞
標準
文例 · 用例
片口は無いと見えて山形に五の字の描かれた一升徳利は火鉢の横に侍坐せしめられ、駕籠屋の腕と云っては時代|違いの見立となれど、文身の様に雲竜などの模様がつぶつぶで記された型絵の燗徳利は女の左の手に、いずれ内部は磁器ぐすりのかかっていようという薄鍋が脆げな鉄線耳を右の手につままれて出で来る。
— 幸田露伴 『貧乏』 青空文庫
女が鉄瓶を小さい方の五徳へ移せば男は酒を燗徳利に移す、女が鉄瓶の蓋を取る、ぐいと雲竜を沈ませる、危く鉄瓶の口へ顔を出した湯が跳り出しもし得ず引退んだり出たりしている間に鍋は火にかけられる。
— 幸田露伴 『貧乏』 青空文庫
長押作りに重い釘隠を打って、動かぬ春の床には、常信の雲竜の図を奥深く掛けてある。
— 夏目漱石 『虞美人草』 青空文庫
正面に雲竜の刺青の片肌を脱いで、大胡坐を掻いた和尚の前に積み上げてある寺銭が山のよう。
— 夢野久作 『名娼満月』 青空文庫
金の燭台、鍍のキラ/\と日に輝く天蓋、雲竜の見事な彫刻のしてあつた須弥壇、さういふものはもう跡も形もなかつた。
— 田山花袋 『ある僧の奇蹟』 青空文庫
鉄鉢を両手で捧げた者、猛虎を足に踏まえた者、香炉に向かって坐っている者、合掌し結跏し趺坐している者、そうして雲竜に駕している者……千態万状の羅漢の像が、昨日今日|鑿で彫ったかのように、鮮かに岩へ彫り付けられていた。
— 国枝史郎 『神州纐纈城』 青空文庫
深き淵のたゞ中に大きなる岩の一つ突き出でたる上に年ふりたる松の枝おもしろく竜にやならんと思はれたるなどもをかしく久米駿公の詩に水抱巌洲松孑立雲竜石窟仏孤栖といへるはこゝなんめりと独りつぶやかる。
— 正岡子規 『かけはしの記』 青空文庫
離れたが最後、雲竜相応じて風を起こし雨を呼び、いかなる狂瀾怒濤、現世の地獄をもたらすかも知れないと言い伝えられている乾坤二刀が、今や所を異にしたのだ!
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫