人込み
ひとごみ
名詞
標準
文例 · 用例
すると同じ頃合いに、逆コースから順コースの人込みに移ったらしい学生の後姿が五六のまばらの人を距てて、かの女の眼の前にぽっかり新しく泛んだ。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
リサは子供っぽい詩と罵ったが今の自分としてはどうしても巴里祭の人込みの中で、ひょっとしたら十何年目のカテリイヌ――恐らく落魄しているだろうが――にめぐり遇っていつか自分を順致して奴隷のようにして仕舞った巴里に対する憎みを語りたい。
— 岡本かの子 『巴里祭』 青空文庫
人込みを分けるようにして狭いブースに近寄っていくと、のちに鎌田さんというお名前を知ることになるやわらかな微笑みを浮かべた女性が、ツールキットのパンフレットをくれた。
— 富田倫生 『パソコン創世記』 青空文庫
しかし、そんな人込みの中でも、アップル社の展示コーナーは、いやでも目についた。
— 富田倫生 『パソコン創世記』 青空文庫
人込みに紛れようとするT田の背中に声をかけると、ビクッとやつの全身が震えた。
— 富田倫生 『青空のリスタート』 青空文庫
だがマックワールド・エキスポの人込みの中、T田の曖昧な薄笑いにマック日本語事始めの栄光と悲惨を思い起こしたオレは、その時なぜか鋭くも日本IBMが打ち出したDOS/Vの成功を直感してしまったのである。
— 富田倫生 『青空のリスタート』 青空文庫
友人と一緒に捏ねかえす人込みの銀座へ出て、風月で飯を食ったことや、元日に歌舞伎で「関の扉」を見て、二日の朝|夙くにけたたましいベルに起こされ、妻がにわかに仆れたことを知り、急いで帰ってみると、その午後はすでに泣き縋る子供の声を後にして、死んで行く彼女であったことも、憶い出したくはなかった。
— 徳田秋声 『仮装人物』 青空文庫
一、二度来たことのある釣堀や射的の前を通って、それからのろのろと池の畔の方へ出て見たが、人込みや楽隊の響きに怯けて、どこへ行って何を見ようという気もしなかった。
— 徳田秋声 『足迹』 青空文庫