櫓音
ろおと
名詞
標準
文例 · 用例
今漕ぎよせるからちょッと待ちなよ」 ギイギイと落ちついた櫓音と共に、おどろきもせず慌てもせず漕ぎ寄せて来る気勢でした。
— 幽霊を買った退屈男 『旗本退屈男 第十話』 青空文庫
藍甕をぶちまけたような大川の水が、とろっと淀んで、羽毛のような微風と、櫓音と、人を呼ぶ声とが、川面を刷いていた。
— 悲願百両 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
櫓音ものどかにすぐ眼の下を忍ぶ小舟の深川通い、沖の霞むは出船の炊ぎか。
— 梅雨に咲く花 『釘抜藤吉捕物覚書』 青空文庫
その部屋のある長屋のうしろは大川で、あけてある小さな高い明り窓から、石垣を洗う波の音や、水面をゆく船の櫓音などが、ときをおいてのんびりと聞えてきた。
— 山本周五郎 『さぶ』 青空文庫
ゴザをしいた船の胴の間に横いざりに坐った足を、袴はうまくかくして、深い紺青の海の上を、船は先生の心一つをのせて、櫓音も規則ただしく、まっすぐに進んだ。
— 壺井栄 『二十四の瞳』 青空文庫
櫓音を聞くだけでも、いかに腕強い上手な船頭かがわかるように思われたが、やがて岸へ漕ぎ着けて降りて来た者を見ると、船頭ではない、二人とも旅|固めした身拵えの、どこにも隙のないような武士だった。
— 小野忠明 『剣の四君子』 青空文庫
道に迷ったのかね」 と、一そうの小舟の櫓音、そして、小舟の上からその漁師がなおもいう。
— 吉川英治 『新・水滸伝』 青空文庫
天満川の櫓音が静かに聞えて来るのである。
— 吉川英治 『新編忠臣蔵』 青空文庫