幻辞.com

糸屑

いとくず
名詞
1
標準
文例 · 用例
花というものは植物の枝に偶然に気紛れにくっついている紙片や糸屑のようなものでは決してない。
寺田寅彦 烏瓜の花と蛾 青空文庫
判事に浮世ばなしを促されたのを機にお幾はふと針の手を留めたが、返事より前に逸疾くその眼鏡を外した、進んで何か言いたいことでもあったと見える、別の吸子に沸った湯をさして、盆に乗せるとそれを持って、前垂の糸屑を払いさま、静に壇を上って、客の前に跪いて、「お茶を入替えて参りました、召上りまし。
泉鏡花 政談十二社 青空文庫
」とおつかさんが屹とした声でおつしやつて、お膝の上の糸屑を細い、白い、指のさきで二ツ三ツはじき落して、すつと出て窓の処へお立ちなすつた。
泉鏡花 化鳥 青空文庫
糸屑を払い落す為であったかも知れぬ。
太宰治 玩具 青空文庫
糸屑をしこたま膝に置いて、それを繋いでばかり居る女、遠くに一人兎の形を真似て両手で耳を高く立て、一つ場所にうずくまって居る男。
――二つの連作―― 青空文庫
物も言わずにぺたりとそのそばに坐り、畳の一つ所をじっと見て、やがて左手で何気なく糸屑を拾いあげたその仕草はふと伊助に似たが、きゅうに振り向くと、キンキンした声で、あ、お越しやす。
織田作之助 青空文庫
十五 お作は婚礼当時と変らぬ初々しさと、男に甘えるような様子を見せて、そこらに散った布屑や糸屑を拾う。
徳田秋声 新世帯 青空文庫
」 お今は淋しげに自分を眺める静子に言いかけて、糸屑を払いながら起ちあがると、浅井の着替えをそこへ持ち出して来た。
徳田秋声 青空文庫