煮売り
にうり
名詞
標準
文例 · 用例
駕籠屋や煮売り酒屋の灯の影がまばらにつづいて、埋立て地を出はずれる頃からは更に暗い田圃路になった。
— 異人の首 『半七捕物帳』 青空文庫
外はもうすっかり冬の晩だぜ」 と、呟きながら、はいって来たのが、今度こそ、たッぷり二升ははいる、貧乏徳利を提げて戻った、島抜け法印――「早やかったろう――酒屋を叩き起して、煮売り屋を叩き起して、これでもなかなか働いて来たのだぜ」 ふところから、竹の皮包みを取り出して開いて見せる。
— 三上於菟吉 『雪之丞変化』 青空文庫
道路に一すじ赤っぽい光を投げて、まだ一軒の煮売り屋が起きている。
— 林不忘 『つづれ烏羽玉』 青空文庫
酒屋と云っても煮売り屋で、今日で云えば縄暖簾、ただし一層大がかりであった。
— 国枝史郎 『任侠二刀流』 青空文庫
遊廓というのも気恥ずかしいような、そんな遊廓を中心にして、煮売り屋、小茶屋がゴチャゴチャあり、江戸両国の盛り場を真似た、掛け小屋なども出来ており、手品、軽口、不具の見世物、そんなものをやっていた。
— 国枝史郎 『血煙天明陣』 青空文庫
近よってゆくと煮売りやの屋台店で、町の片側に十軒ちかくも並んでいた。
— 山本周五郎 『滝口』 青空文庫
醤油くさい煮売りや濁酒のにおいのうえに、夕月が仰がれた。
— 第四分冊 『新書太閤記』 青空文庫
栄養の問題などとは些しの関係もなしに、煮売りと称していつでも出来合いの食物が得られることになると、冠婚葬祭の人間の大事を、意義あらしめたところの特殊飲食、殊に毎年の節供という式日の価値が、漸次に稀薄とならざるを得なかった。
— 柳田国男 『木綿以前の事』 青空文庫