隣町
となりまち
名詞
標準
neighboring town
文例 · 用例
傍に、総井戸を埋めたと云う、扇の芝ほど草の生えた空地があって、見切は隣町の奥の庭。
— 泉鏡花 『日本橋』 青空文庫
姉の静子は医者を呼んだその足で隣町の若い叔母の多可子を呼びに廻った。
— 岡本かの子 『勝ずば』 青空文庫
しっかりしなくちゃ駄目じゃないの」 隣町の婚家先から駈けつけて来た多可子は二階に昇るなり政枝の右肩を掴み、優しくゆすって叱った。
— 岡本かの子 『勝ずば』 青空文庫
少し離れた畳の上にうずくまると、隣町から駈け続けて来た自分の息切れを、やっとこの時急に感じ出して喘いだ。
— 岡本かの子 『勝ずば』 青空文庫
その側に多可子は浴衣の上に伊達巻をまいたばかりで隣町の自家へ朝飯前の夫を婆やにあずけて、周章てて駈けつけたままの姿で坐っていた。
— 岡本かの子 『勝ずば』 青空文庫
政雄はその晩既に宵の口に隣町の淋しい処で女を襲おうとしたが、人が来たので逃げ、それから近くのカフェーへ入って酒を飲みながら夜を更かし、そして、電車で帰って停車場を出たところで一人で歩いている女を見て、それを襲おうとして怪異を見たのであった。
— 田中貢太郎 『女の怪異』 青空文庫
だが、未だ一本あしの竹竿で滑稽な脚取りであつたにも関はらず、隣町へ麦袋を積んでゆくるいの馬車に同乗を乞ふて出発した私は少々「悲劇のさゝやき」に中毒した態と云ふべきであつたらう。
— 牧野信一 『るい』 青空文庫
どうか小金も有るやうな話で、鴫沢隆三と申して、直隣町に居りまするが、極手堅く小体に遣つてをるのでございます」「はあ、知れたもんだね」 我は顔に頤を掻撫づれば、例の金剛石は燦然と光れり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫