繿縷
繿縷
名詞
標準
文例 · 用例
繿縷にはなっているが兎に角、麻の着物であります。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
満腔の不平を湛えて、かえって嫣然として天の一方を睨むようになり得ると、こはいかに、薄汚い、耳の遠い、目の赤い、繿縷を纏った婆さんが杖に縋って、よぼよぼと尋ねて来て、生の母親が大病である、今生でたった一目、名残が惜みたいという口上。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
この時まで嗜んで持っていたか、懐中鏡やら鼈甲に透彫の金|蒔絵の挿櫛やら、辺に散ばった懐紙の中には、見覚のある繿縷錦の紙入も、落交って狼藉極まる、蝶吉はあたかも手籠にされたもののごとく、三人|懸りで身動きもさせない様子で、一|人は柄杓を取って天窓から水を浴びせておった。
— 泉鏡花 『湯島詣』 青空文庫
古草履だの、ボール箱だの、紙屑や繿縷片のやうなもの……。
— 徳田秋聲 『歯痛』 青空文庫
繿縷をまとうた蘇武の目の中に、ときとして浮かぶかすかな憐愍の色を、豪奢な貂裘をまとうた右校王李陵はなによりも恐れた。
— 中島敦 『李陵』 青空文庫
繿縷布片の腰巻が脱け落ちそうになったまま叫び続けた。
— 夢野久作 『笑う唖女』 青空文庫
却て何となく嬉しそうに注射器と澄夫の顔を見比べてニコニコしていたが、注射が済むと、何と思ったか急に温柔しく手を離して、伝六郎と一作に手を引かれながら、繿縷の腰巻を引擦り引擦り立ち上った。
— 夢野久作 『笑う唖女』 青空文庫
繿縷の袖に置く露の、そればかりが悲しき涙か。
— 清水紫琴 『移民学園』 青空文庫