掻撫
掻撫
名詞
標準
文例 · 用例
手毬を取って、美女は、掌の白きが中に、魔界はしかりや、紅梅の大いなる莟と掻撫でながら、袂のさきを白歯で含むと、ふりが、はらりと襷にかかる。
— 泉鏡花 『草迷宮』 青空文庫
」 それを聞くや、「わつ、」と泣いて、雪枝は横様に縋りついた、胸を突伏せて、唯戦く…… 徐ら、其の背を、姉がするやう掻撫でながら、「恁う成るのが定まり事、……人の運は一つづゝ天の星に宿ると言ひます。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
見送りもせず、夫人はちょいと根の高い円髷の鬢に手を障って、金蒔絵の鼈甲の櫛を抜くと、指環の宝玉きらりと動いて、後毛を掻撫でた。
— 泉鏡花 『伊勢之巻』 青空文庫
)お沢 (箒を堂の縁下に差置き、御手洗にて水を掬い、鬢掻撫で、清き半巾を袂にし、階段の下に、少時ぬかずき拝む。
— 泉鏡花 『多神教』 青空文庫
と背掻撫でて助れば、得三もほっと呼吸、「あ、好かった。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
いざ、金銀の扇、立つて舞ふよと見れば、圓髷の婦、なよやかにすらりと浮きて、年下の島田の鬢のほつれを、透彫の櫛に、掻撫でつ。
— 泉鏡太郎 『婦人十一題』 青空文庫
どうか小金も有るやうな話で、鴫沢隆三と申して、直隣町に居りまするが、極手堅く小体に遣つてをるのでございます」「はあ、知れたもんだね」 我は顔に頤を掻撫づれば、例の金剛石は燦然と光れり。
— 尾崎紅葉 『金色夜叉』 青空文庫
されど自慢の頬鬢|掻撫づる隙もなく、青黛の跡絶えず鮮かにして、萌黄の狩衣に摺皮の藺草履など、よろづ派手やかなる出立は人目に夫と紛うべくもあらず。
— 高山樗牛 『瀧口入道』 青空文庫