封じ
ふうじ
名詞
標準
文例 · 用例
今日まで封じを解かざりしは、我れながら心強しと誇りたる浅はかさよ。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
我が心は清めるか濁れるか」 封じ目ときて取出せば一尋あまりに筆のあやもなく、有難き事の数々、辱じけなき事の山々、思ふ、恋ふ、忘れがたし、血の涙、胸の炎、これ等の文字を縦横に散らして、文字はやがて耳の脇に恐しき声もて※くぞかし。
— 樋口一葉 『軒もる月』 青空文庫
そのうちに、妾は急に何ものかに封じられているような可笑しさを覚えて、寝床に顔を埋めて笑い転げました。
— 吉行エイスケ 『バルザックの寝巻姿』 青空文庫
他の手に封じられた、仔はどうして、自分で笊が抜けられよう?
— 泉鏡花 『二、三羽――十二、三羽』 青空文庫
といふ、兩名の炭燒が、同一雪籠に會つて封じ込められたやうになり、二日三日は貯蓄もあつたが、四日目から、粟一粒も口にしないで、熊の如き荒漢等、山狗かとばかり痩せ衰へ、目を光らせて、舌を噛んで、背中合せに倒れたまゝ、唸く聲さへ幽な處、何、人間なりとて容赦すべき。
— 泉鏡花 『雪の翼』 青空文庫
先住の室が自ら其身を封じたる一室は、不開室と称へて、開くことを許さず、はた覗くことをも禁じたりけり。
— 泉鏡花 『妖怪年代記』 青空文庫
曲角の青大将と、この傍なる菜の花の中の赤楝蛇と、向うの馬の面とへ線を引くと、細長い三角形の只中へ、封じ籠められた形になる。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
途中気懸りになって、密とその封じ目を切って見たれば、==妹御へ、一、この馬士の腸一組参らせ候==としたためられた――何も知らずに渡そうものなら、腹を割かるる処であったの。
— 泉鏡花 『夜叉ヶ池』 青空文庫