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柔々

柔々
名詞
1
標準
文例 · 用例
この頃のやうな若葉時になると、薄く透明な黄味を含んだ楢の葉が、柔々しい絹糸のやうな裏毛を、白く光らせて、あつちでも、こつちでも、ひら/\と波頭のやうに、そよ風に爪立つてゐる。
小島烏水 亡びゆく森 青空文庫
一体に、谷は、四月の末か、五月頃の柔々しい呼吸で充ちていて、大きな声を出すのすら、いたいたしいようだ。
小島烏水 白峰山脈縦断記 青空文庫
喜十郎旦那が許で、ふっくりと入れさっしゃる綿の初穂へ、その酒浸しの怪物さ、押ころばしては相成んねえ、柔々積方も直さっしゃい、と利かぬ手の拳を握って、一力味力みましけ。
泉鏡花 草迷宮 青空文庫
最も得意なのは、も一つ茸で、名も知らぬ、可恐しい、故郷の峰谷の、蓬々しい名の無い菌も、皮づつみの餡ころ餅ぼたぼたと覆すがごとく、袂に襟に溢れさして、山野の珍味に厭かせたまえる殿様が、これにばかりは、露のようなよだれを垂し、「牛肉のひれや、人間の娘より、柔々として膏が滴る……甘味ぞのッ。
泉鏡花 茸の舞姫 青空文庫
莞爾とその時、女が笑った唇が、縹色に真青に見えて、目の前へ――あの近頃の友染向にはありましょう、雁来紅を肩から染めた――釣り下げた長襦袢の、宙にふらふらとかかった、その真中へ、ぬっと、障子一杯の大きな顔になって、私の胸へ、雪の釣鐘ほどの重さが柔々と、ずしん!
泉鏡花 菊あわせ 青空文庫
欄干には、下の西洋樫の木が、大きな柔々した青葉を揃へてゐる。
鈴木三重吉 桑の実 青空文庫
柔々しくはあるが、それだけまた賢そうな眼付をした、好い妹を有つ岡見を羨みながら、捨吉は牛込の下宿の方へ帰って行った。
島崎藤村 桜の実の熟する時 青空文庫
風采からいっても、美妙は色白な柔々しい、ドチラかというと少し柔気て、如何にも「詩人でございます」といったような美男であったが、紅葉は色の浅黒い、苦み走った、スッキリと背の高い江戸前の、美男というよりは好男子という方であった。
内田魯庵 美妙斎美妙 青空文庫