漬つ
ひつ
動詞
標準
文例 · 用例
人畜を擧げて避難する場合に臨んでも、猶濡るゝを恐れて居つた卑怯者も、一度溝にはまつて全身水に漬つては戰士が傷ついて血を見たにも等しいものか、茲に始めて精神の興奮絶頂に達し、猛然たる勇氣は四肢の節々に振動した。
— 伊藤左千夫 『水害雜録』 青空文庫
水に漬つた一切の物未だに手の著け樣がない。
— 伊藤左千夫 『水害雜録』 青空文庫
じつとそれを考へ入ると、赤い/\花の咲きつゞいた甘い日向の中に漬つたやうな氣分になつて來る。
— 鈴木三重吉 『赤い鳥』 青空文庫
さうして、何かその女に關して或事が見出されるやうな期待を持つて、戀しい晝と夜とに漬つてゐたけれど、十日もたつても、去つた女はそれぎり再び歸つては來なかつた。
— 鈴木三重吉 『赤い鳥』 青空文庫
大抵は十三四人漬つてるがたまには誰も居ない事がある。
— 夏目金之助 『坊っちやん』 青空文庫
見ればすぐそこの川の中には、裸体の少年がすつぽり頭まで水に漬つて死んでゐたが、その屍体と半間も隔たらない石段のところに、二人の女が蹲つてゐた。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫
水槽の中に折重なつて漬つてゐる十あまりの死体もあつた。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫
上から三段目は水に漬つたり水の上に出たりするので、湿つてぬる/\してゐた。
— BALTHASAR ALDRAMIN. KURZE LEBENSGESCHICHTE AUS DEM ALTEN VENEDIG. 『復讐』 青空文庫