渓底
けいてい
名詞
標準
文例 · 用例
あたりの山では処々茅蜩殿、血と泥の大沼になろうという森を控えて鳴いている、日は斜、渓底はもう暗い。
— 泉鏡花 『高野聖』 青空文庫
悲しみに捉えられた彼の前には、渓底を見るような微暗い前途が横たわってみえた。
— 田中貢太郎 『金鳳釵記』 青空文庫
梅原さんの話に由ると、深い渓底から汲んで来た水の惜まれることが甚だしい。
— 附 満蒙の歌 『満蒙遊記』 青空文庫
空はどことなく薄明るく、谷を限るベルアルプは、雲の上と思われる、が渓は夜明けをそのままで、線路に近い積雪に、石をのせた百姓家と、霧の絶え間に、これも真白な、渓底を左に見下ろすばかり、電車は昨日通ったローンの崖の上をだんだん登りながら、谷にはなれて北に向かう。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫
時々寺の鐘の音が、静かな渓底から響いて来る。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫
ラウテルブルンネンの渓底は、無論純白であるが、その両側にきったての断崖には、雪もかからず、まだ日をうけぬまっ黒な岩壁に、無数の氷柱がたれ下っている。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫
ウェンゲンはすぐ頭の上にあるけれど、此の渓底との高さの差は、千六百|呎に及んでいる。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫
眼下になだれ落ちるユンクフラウの絶壁の、裾は靄がたなびいて、マッテンか知らず、渓底の小村には、小さい灯火が動きはじめた。
— 辻村伊助 『スウィス日記』 青空文庫