聊
聊
名詞
標準
文例 · 用例
予も亦不思議と其声に揺られて、心の凝りが聊か柔かになった。
— 伊藤左千夫 『大雨の前日』 青空文庫
結句『曇りてあるなり』の口調はこの塲合|聊か軽快に過ぎると思う。
— 伊藤左千夫 『歌の潤い』 青空文庫
それから七日の日にはわざわざでない上野辺に聊か用事があったので。
— 伊藤左千夫 『根岸庵訪問の記』 青空文庫
かういふ歌を好きだの面白いのと云ふのは聊か穏かでなく思はれるが、只佳作だなど云ふのは猶をかしいからさう云つて置く。
— 伊藤左千夫 『『悲しき玩具』を読む』 青空文庫
実際二人はそれほどに堕落した訣でないから、頭からそうときめられては、聊か妙な心持がする。
— 伊藤左千夫 『野菊の墓』 青空文庫
「家は腰高の塗骨障子を境にして居間と台所との二間のみなれど竹の濡縁の外には聊かなる小庭ありと覚しく、手水鉢のほとりより竹の板目には蔦をからませ、高く釣りたる棚の上には植木鉢を置きたるに、猶表側の見付を見れば入口の庇、戸袋、板目なぞも狭き処を皆それぞれに意匠して網代、船板、洒竹などを用ゐ云々」。
— 九鬼周造 『「いき」の構造』 青空文庫
相手は何處迄も御人好の御坊ちやまの、泣き出し相に、なさけない顏でおろおろして居るまだるつこさ、芳公の啖呵も折角、響が來ないので、聊か之も張合なさの悄氣た體。
— 萩原朔太郎 『二十三夜』 青空文庫
然るに今日私は過去五年間の暗中模索、傷ましき躁宴の後に、聊か芸術の泉なるものが依て以て存する所以に想ひ到つた。
— 中原中也 『詩に関する話』 青空文庫