粉黛
ふんたい
名詞
標準
文例 · 用例
彼女は生れつきの娥※靡曼に加えて当時ひそかに交通のあった地中海沿岸の発達した粉黛を用いていたので、なやましき羅馬風の情熱さえ眉にあふれた。
— 岡本かの子 『荘子』 青空文庫
三時か四時ごろのカフェーにはまだ吸血鬼の粉黛の香もなく森閑としてどうかするとねずみが出るくらいであった。
— 寺田寅彦 『コーヒー哲学序説』 青空文庫
初更に至るや、病める妻なよやかに起きて、粉黛盛粧都雅を極め、女婢をして件の駿馬を引出させ、鞍を置きて階前より飜然と乘る。
— 泉鏡太郎 『唐模樣』 青空文庫
この豊原一の宏壮な旅館だからかとも思ったが、まるで芸妓のような美服を著、粉黛している。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
今なら女優というような眩しい粉黛を凝らした島田夫人の美装は行人の眼を集中し、番町女王としての艶名は隠れなかった。
— 内田魯庵 『三十年前の島田沼南』 青空文庫
粉黛の仮と命のある人と二あるが如き生涯に入る 生命のある真の人間と、人前に出る白粉をつけ紅をさした仮の人間と二人が同じく私の中に住むやうな生活がとうとう私にも来てしまつた。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
翌日嵐山、金閣寺を見物して、クラシックの匂いを慕って奈良に回ったが綺羅粉黛人跡繁くして駄目であった。
— 倉田百三 『愛と認識との出発』 青空文庫
悟空の側には又衣裳を着けず、粉黛を装わざる大男あり。
— 芥川龍之介 『北京日記抄』 青空文庫