黒靴
くろくつ
名詞
標準
文例 · 用例
けれども継ぎ継ぎだらけのワイシャツとズボン下を穿いて、黒いボロボロのネクタイを上手に結んでしまうと、ウルフは、穴だらけの黒靴下を両手にブラ下げたまま、又、ジッとうなだれて考えはじめた。
— 夢野久作 『ココナットの実』 青空文庫
家の中は壁から床まで黒靴で詰っていた。
— 横光利一 『街の底』 青空文庫
その重い扉のような黒靴の壁の中では娘がいつも萎れていた。
— 横光利一 『街の底』 青空文庫
ゆき子は自分が惨めに敗けてしまつた気で、学校時代のサージの制服を仕立てなほした洋袴に、爪先きのふくらんだ、汚れた黒靴をはいてゐる事に、いまいましいものを感じてゐる。
— 林芙美子 『浮雲』 青空文庫
一つの駅で、野天プラットフォームの砂利を黒靴で弾きとばしながらどっと女学生達が乗込んで来た。
— 宮本百合子 『東京へ近づく一時間』 青空文庫
黒靴みがき、十カペイキ!
— 宮本百合子 『ズラかった信吉』 青空文庫
十銭、五銭とりまぜの財布の口をしめ、ひろ子はもう一遍首をかしげるような恰好をしたが、時計を見直すと、今度は地味な黒靴をはっきりとした急ぎ足になって停留場に向った。
— 宮本百合子 『乳房』 青空文庫
伸子には、この艶々した黒靴が、妙に人格を持っているように感じられた。
— 宮本百合子 『伸子』 青空文庫