汽鑵
きかん
名詞
標準
文例 · 用例
汽鑵車の烟は火になっていた。
— 梶井基次郎 『過古』 青空文庫
片帆の力を借りながら、テンポの正規的な汽鑵の音を響かせて、木下の乗る三千|噸の船はこの何とも知れない広大な一鉢の水の上を、無窮に浮き進んで行く。
— 岡本かの子 『河明り』 青空文庫
汽鑵の騷音と云ふか。
— 有島武郎 『潮霧』 青空文庫
神は在る、怪奇な汽鑵に在る。
— 北原白秋 『海豹と雲』 青空文庫
……と思う間もなく、真正面に横たわる松原の緑の波の中から、真黒な汽鑵車が、狂気のように白い汽笛を吹き立てつつ、全速力で飛び出して来た。
— 夢野久作 『空を飛ぶパラソル』 青空文庫
そうして右手で襟元を繕いながら、左手で前裾をシッカリと掴むと、白足袋を横すじかいに閃めかして、汽鑵車の前に飛び込もうとしたが、線路の横の砂利に躓いて、バッタリと横向きに倒れた。
— 夢野久作 『空を飛ぶパラソル』 青空文庫
身動きは愚か、瞬き一つ出来ないままに……と思う間もなく女の全身に、真黒な汽鑵車の投影が、矢のように蔽いかかった。
— 夢野久作 『空を飛ぶパラソル』 青空文庫
ちょうどマン中の汽鑵が真正面に見えるだろう。
— 夢野久作 『焦点を合せる』 青空文庫