棘々
棘々
名詞
標準
文例 · 用例
また電車のなかの人に敵意とはゆかないまでも、棘々しい心を持ちます。
— ――或る私信―― 『橡の花』 青空文庫
町の医者は「それは潔癖症といって一種の精神病患者です」というが、病的というほどの痙攣って棘々した感じのものは持っていません。
— 岡本かの子 『生々流転』 青空文庫
先方の出す手が棘々満面の手だろうが粘滑油膩の手だろうが鱗の生えた手だろうが蹼の有る手だろうが、何様な手だろうが構わぬ、ウンと其手を捉えて引ずり出して淵のヌシの正体を見届けねばならぬのである。
— 幸田露伴 『蒲生氏郷』 青空文庫
そして、突然何の予告もなしに、久我鎮子の瘠せた棘々しい顔が現われた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
だが、しかしレヴェズさん、とうとうあの遺言書以外に、僕は動機の深淵を探り当てましたよ」と法水は、微笑の中に妙に棘々しいものを隠して、相手に向けた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
しかも、奇妙に脂ぎっていて、死戦時の浮腫のせいでもあろうか、いつも見るように棘々しい圭角的な相貌が、死顔ではよほど緩和されているように思われた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
あの悲痛極まる黙劇の中で、幡江が父に、何を訴えたかと思うね」「なに、告白悲劇……とにかく、冗談は止めにして貰おう」 と棘々しい語気で、熊城が遮った。
— 小栗虫太郎 『オフェリヤ殺し』 青空文庫
末娘に棘々しくあたる痛みが、どんな嫁のかしずきにも癒やされなかった。
— 鷹野つぎ 『草藪』 青空文庫