秋毫
しゅうごう
副詞
標準
文例 · 用例
ルクレチウスは素手でともかくも後代の物理的科学の基礎を置いたことは事実であるのに、頭脳のない書物と器械だけでは科学は秋毫も進められないのである。
— 寺田寅彦 『ルクレチウスと科学』 青空文庫
その自由意志が秋毫も宇宙線に影響されないとは保証できないような気がする。
— 寺田寅彦 『蒸発皿』 青空文庫
取留めのない夢の想で、拓はこの時少年がお雪に向ってなす処は、一つ一つ皆思うことあって、したかのごとく感じられて、快活かくのごとき者が、恋には恐るべき神秘を守って、今までに秋毫も、さる気色のなかったほど、一層大いなる力あることを感じて、愕然とした。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
老婦人は見ざるがごとく、秋毫も騒げる色無し。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
從て手古奈には勿論忍男に對しても恨の念を秋毫も挾まぬのである。
— 伊藤左千夫 『古代之少女』 青空文庫
車に乗ッてからお政がお勢に向い、「お勢、お前も今のお娘さんのように、本化粧にして来りゃア宜かッたのにネー」「厭サ、あんな本化粧は」「オヤ何故え」「だッて厭味ッたらしいもの」「ナニお前十代の内なら秋毫も厭味なこたア有りゃしないわネ。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
婦人の癖に園田勢子と云う名刺を拵らえるッてッたから、お勢ッ子で沢山だッてッたら、非常に憤ッたッけ」「アハハハハ」 ト今まで黙想していた文三が突然無茶苦茶に高笑を做出したが、勿論秋毫も可笑しそうでは無かッた。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
三好、松永などの下剋上の兵隊と違ひ、規律の厳粛な新興兵士とも云ふべき信長の軍勢は、京都には入つても、秋毫も犯さなかつたから、忽ちに上下の信望を得て、信長の京都に於ける位置を、堅実なものにしたのである。
— 菊池寛 『二千六百年史抄』 青空文庫