黒死
こくし
名詞
標準
文例 · 用例
自殺の虫の感染は、黒死病の三倍くらいに確実で、その波紋のひろがりは、王宮のスキャンダルの囁きよりも十倍くらい速かった。
— 太宰治 『狂言の神』 青空文庫
同じ町内に赤痢患者が出で、同じ市内に黒死病患者が出でるのも、我が不幸なるは明白である。
— 幸田露伴 『努力論』 青空文庫
その、通称黒死館と呼ばれる降矢木の館には、いつか必ずこういう不思議な恐怖が起らずにはいまいと噂されていた。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
ところで、事件の開幕に当って、筆者は法水の手許に集められている、黒死館についての驚くべき調査資料のことを記さねばならない。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
もし、ウイチグス呪法書が黒死館のどこかに残されているとしたら、犯人の外に、もう一人僕等の敵がふえてしまうのだからね」「そりゃまた何故だい。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
さるにしても、このほど帰国の船中|蘭貢において、テレーズが再帰熱にて死去したるは哀れとも云うべく、また、皮肉家大鳥文学博士がこの館を指し、中世堡楼の屋根までも剥いで黒死病死者を詰め込みしと伝えらるる、プロヴィンシア繞壁模倣を種に、黒死館と嘲りしこそ可笑しと云うべし――。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
ここで、僕等が何より注目しなければならないのは、博士がただの一日も黒死館に住まなかったと云うばかりか、明治二十三年には、わずか五年しか経たない館の内部に大改修を施したと云う事で、つまり、ディグスビイの設計を根本から修正してしまったのだ。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫
そうして、自分は寛永寺裏に邸宅を構えて、黒死館には弟の伝次郎夫妻を住わせたのだが、その後の博士は、自殺するまでの四十余年をほとんど無風のうちに過したと云ってよかった。
— 小栗虫太郎 『黒死館殺人事件』 青空文庫