捲髪
捲髪
名詞
標準
文例 · 用例
靠れ壁の隅に無精らしく曲げた背中をもたせて笑ってばかり居る若い娘と、立ち上った群の中に、もう一人長身の若い娘が、お出額の捲髪を光線の中に振り上げ振り上げ、智慧のない恰好で夢中に拍手しているのを、かの女は第一にはっきり見て取った。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
額に捲髪のあるロザリが先に立って、その次に男と腕を組んで、少し狡るそうな美しい娘のエレンが、気取って済ましてついて来た。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
そして、捲髪のロザリをかの女自身の右の並びに置き、自分の左側には小ザッパリした青年を隔てに置いて、その向うに牛のような男を坐らした。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
何事がもちあがろうが――よしんばヴォニファーチイが入って来て「砂糖がきれました」と言上に及ぼうが、何か忌わしい世間の陰口が耳に入ろうが、客の中で喧嘩が始まろうが――彼女はただ、豊かな捲髪を一振りして、「くだらない」と言うだけで、けろりとしていた。
— ツルゲーネフ 『はつ恋』 青空文庫
髪の毛は、前髪を立てたり捲髪にしているのもなければ、フランス人の所謂といった流儀のもなく、一様に短かく刈りこんでいるか、さもなければぴったりと撫でつけている、従って顔の輪郭が一層ずんぐりして厳つく見える。
— または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊 『死せる魂』 青空文庫
フランシーヌは、興奮していて、顔のよこにたらしている艷のない栗色の捲髪をときどき手で払いながら、テーブルに片肱をかけ、鼻にかかる声を一層ひっぱってできるだけ大人の女のように蜂谷と話している。
— 宮本百合子 『道標』 青空文庫
その頬にたれている捲髪と同じように、長すぎるルーマニア風の鼻から、彼女は、「だって――寒いんですもの」 寒い、ということにあたりまえでない意味がふくまれているような鼻声と目つきで母親を見ながら食卓に向っている体をくねらせた。
— 宮本百合子 『道標』 青空文庫
相も変らぬアイロンの匂い、白粉の匂い、色んな薬の匂い、来る朝も来る朝も例の捲髪紙、相も変らぬ自己欺瞞……。
— ДУЭЛЬ 『決闘』 青空文庫