紙屑
かみくず
名詞
標準
文例 · 用例
利根川の河原に望みて、堤防に櫻を多く植ゑたり、常には散策する人もなく、さびしき芝生の日だまりに、紙屑など散らばり居るのみ。
— 萩原朔太郎 『純情小曲集』 青空文庫
へんに紙屑がぺらぺらしてかなしい日光の射してるところへ餓鬼共のヒネびた聲がするではないか。
— 萩原朔太郎 『定本青猫』 青空文庫
ゲーテも、ハイネも、ニイチェも、日本では早くから名が叫ばれて流行し、その文學的概論さへ解らない中に、既に「流行おくれ」となつてバタ屋の紙屑箱に賣られて行つた。
— 萩原朔太郎 『初めてドストイェフスキイを讀んだ頃』 青空文庫
今まではみづ/\しくふうわりと眞白に降りたまつてゐたものが、知らぬ間に溶け固つて、不溶解性の煤だの芥だの紙屑だのが、がぢ/\とさゝくれだつた雪の表面に現はれ出る。
— 有島武郎 『春』 青空文庫
教室の隅に紙屑入の大きな壺があつて、私はときたまそれを指さして、蛸もつぼへはひらないかと言へば、蛸はその壺へ頭をいれて笑ふのだ。
— 太宰治 『思ひ出』 青空文庫
何の関係もない色々の工場で製造された種々の物品がさまざまの道を通ってある家の紙屑籠で一度集合した後に、また他の家から来た屑と混合して製紙場の槽から流れ出すまでの径路に、どれほどの複雑な世相が纏綿していたか、こう一枚の浅草紙になってしまった今では再びそれをたどって見るようはなかった。
— 寺田寅彦 『浅草紙』 青空文庫
紙屑のような論文でも沢山に出るうちには偶にはいいものも出るであろうと思われる。
— 寺田寅彦 『学位について』 青空文庫
この筆法をもってすれば、情婦から来た文殻が紛込んだというので、紙屑買を追懸けて、慌てて盗賊と怒鳴り兼ねまい。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫