浅茅が原
あさじがはら
名詞
標準
文例 · 用例
彼の古戦場を過つて、矢叫の音を風に聞き、浅茅が原の月影に、古の都を忍ぶたぐひの、心ある人は、此の媼が六十年の昔を推して、世にも希なる、容色よき上※としても差支はないと思ふ、何となく犯し難き品位があつた。
— 泉鏡花 『二世の契』 青空文庫
源道濟のは 思ひかね別れし野辺を来て見れば浅茅が原に秋風ぞ吹く 西行からは典型性を帯びて来る。
— 平野萬里 『晶子鑑賞』 青空文庫
鈴子は恥ずかしそうにしていたが、「茅花ぬく浅茅が原の壺すみれ今さかりなり吾が恋うらくは」「壺すみれはいいね。
— 倉田百三 『光り合ういのち』 青空文庫
旅人の笠白たへに雪つもりつゝ(新古今)(家集……ぢを……雪はふりつゝ)夕日さす、浅茅が原の旅人は、あはれ、いづくに宿をかるらむ(新古今)早苗とる山田の筧もりにけり。
— 万葉集以後の歌風の見わたし 『短歌本質成立の時代』 青空文庫
十月二十四日夜 ゆうがた、浅茅が原のあたりだの、ついじのくずれから菜畑などの見えたりしている高畑の裏の小径だのをさまよいながら、きのうから念頭を去らなくなった物語の女のうえを考えつづけていた。
— 堀辰雄 『大和路・信濃路』 青空文庫
このツボスミレもはやく歌人の目にとまり、万葉の歌に山ぶきの咲きたる野辺のつぼすみれ この春の雨にさかりなりけり茅花抜く浅茅が原のつぼすみれ いまさかりなり吾が恋ふらくは がある。
— 牧野富太郎 『植物知識』 青空文庫
例えば「山ぶきの咲きたる野辺のつぼすみれこの春の雨に盛りなりけり」あるいは「茅花ぬく浅茅が原のつぼすみれ今盛りなり吾が恋ふらくは」などがこれである。
— 牧野富太郎 『植物記』 青空文庫
この室に落ちついて、浅茅が原の向こうに見える若草山一帯の新緑(と言ってももう少し遅いが)を窓から眺めていると、いかにも京都とは違った気分が迫って来る。
— 和辻哲郎 『古寺巡礼』 青空文庫