御嬢様
おじょうさま
名詞
標準
文例 · 用例
上野へ入れば往来の人ようやくしげく、ステッキ引きずる書生の群あれば盛装せる御嬢様坊ちゃん方をはじめ、自転車はしらして得意気なる人、動物園の前に大口あいて立つ田舎漢、乗車をすゝむる人力、イラッシャイを叫ぶ茶店の女など並ぶるは管なり。
— 寺田寅彦 『半日ある記』 青空文庫
ちょうど婆さんの御誂え通りに事件が輻輳したからたまらない」「それでも宇野の御嬢さんはまだ四谷にいるんだから心配せんでもよさそうなものだ」「それを心配するから迷信|婆々さ、あなたが御移りにならんと御嬢様の御病気がはやく御全快になりませんから是非この月|中に方角のいい所へ御転宅遊ばせと云う訳さ。
— 夏目漱石 『琴のそら音』 青空文庫
四谷から病人の事でも何か云って来たのか」「それ御覧遊ばせ、そんなに御嬢様の事を心配していらっしゃる癖に」「何と云って来た。
— 夏目漱石 『琴のそら音』 青空文庫
千代子は固より誰彼の容赦なく一様に気易く応対のできる女だったので、御嬢様と呼びかけられるたびに相当の受答をして話を勢ました。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
千代子の泳の噂が出た時、髪結は活溌で宜しゅうございます、近頃の御嬢様方はみんな水泳の稽古をなさいますと誰が聞いても拵えたような御世辞を云った。
— 夏目漱石 『彼岸過迄』 青空文庫
誰か来たなと一生懸命に聞いていると「御嬢様、旦那様と奥様が呼んでいらっしゃいます」と小間使らしい声がする。
— 夏目漱石 『吾輩は猫である』 青空文庫
物を貰いに参りました序に、あの娘の背中を流す女中衆さんから聞き出したことで……私は、いつも其家此家の女たちの文使いをして遣りまするで、蔵元屋の女中さんも、詳しゅう話いて聞かせました上に、どうぞ御嬢様をば良い処へ世話して下さいと言うていつもオヒネリを十文ぐらいくれます。
— ――博多名物非人探偵 『狂歌師赤猪口兵衛』 青空文庫
どうぞこの事ばっかりは秘密にして、一|刻も早よう御嬢様を蔵元屋の外へ出いて下さい。
— ――博多名物非人探偵 『狂歌師赤猪口兵衛』 青空文庫