自領
じりょう
名詞
標準
文例 · 用例
そこで将門は明かな勝利を得て、府の日記へ、下総介が無道に押寄せて合戦しかけた事と、これを追退けてしまつたことをば明白に記録して置いて、悠然と自領へ引取つた。
— 幸田露伴 『平将門』 青空文庫
江戸幕府の制度は、外面は最も地方分権的体裁を示してゐるが、内面は最も精緻な中央集権制で、自領内では行政権、警察権をもつてゐる百万石の大名も、幕府の一片の命令で蟄居、国替、減石、断絶せしめられるので、その何れも今の内閣が地方官の変更任免を奏請するよりも、まだ容易であつた。
— 菊池寛 『二千六百年史抄』 青空文庫
川を越えりゃ、自領だからのう」「へい、へい」 表で、忙がしい返事がして、一人の旅商人が、一人の役人に襟首をつかまれながら、小走りに、押されて茶屋の中へ入ってきた。
— 直木三十五 『三人の相馬大作』 青空文庫
朝霞が家計のなかからひねりだしているのならそれこそゆるしがたいことなので、帰るなり北ノ坪へ行って問いつめると、朝霞はやむなく身附きの自領の上りから払っていたことを白状した。
— 久生十蘭 『無月物語』 青空文庫
行長はその斬罪の最後の日に到るまで極めて誠実なる切支丹で、秀吉の禁教令後は追放のパードレを自領の天草に保護して布教に当らせ、秀吉と切支丹教徒の中間に立つて斡旋につとめ、自らの切支丹たることをついぞ韜晦したことがなかつた。
— 坂口安吾 『二流の人』 青空文庫
もし家計のなかから朝霞がひねりだしていたのだったら、ゆるしがたいことなので、帰るなり葵ノ壺へ行って問いつめると、朝霞はやむなく身付きの自領の上りから払っていたことを白状した。
— 久生十蘭 『無月物語』 青空文庫
それも自領の安全を護るためだ。
— 吉川英治 『平の将門』 青空文庫
敵国を謀るために、自領の中に無数に入り込んでいる密偵を計るために――周囲の肉親をも家臣をも、思い込ませて来たのだった。
— 第一分冊 『新書太閤記』 青空文庫