繊雲
せんくも
名詞
標準
文例 · 用例
微風も一繊雲もないのに、ゆらゆらとその潮が動くと、水面に近く、颯と黄薔薇のあおりを打った。
— 泉鏡花 『燈明之巻』 青空文庫
雲は狂い廻わる風に吹き払われて形を潜め、空には繊雲一ツだも留めず、大気中に含まれた一種清涼の気は人の気を爽かにして、穏かな晴夜の来る前触れをするかと思われた。
— イワン・ツルゲーネフ Ivan Turgenev 『あいびき』 青空文庫
半夜に至りて天に纖雲なく、皎月はヱネチアと岸區との間なる風なき水を照せり。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
既にして暮色蒼然として至り、纖雲に映ずる夕陽の光消える頃、列車は進行を始めたり。
— 長塚節 『草津行』 青空文庫
江戸河にて纖雲縹に長くながれ、落つる日黄ばめるこの夕暮、おもむきあるかな、筏浮けて舟人河瀬に輕くさせり。
— 薄田泣菫 『泣菫詩抄』 青空文庫