繁雑
はんざつ
名詞
標準
文例 · 用例
私は日本が過去の栄華から、幻燈に似た流行を耽溺するプチ・ブルジョワの一群と、実生活から畸型的に形成されたブルジョワ末期の社会に発生したプロレタリア精神の出現を、繁雑な社会主義理論闘争から逃れて、私を信仰する一人の女性の涙とともに東京駅を離れて品川の砲台、横目で計算していた。
— Love on Drought 『恋の一杯売』 青空文庫
煮豆屋の婆が口を利いて、築地辺の大会社の社長が、事務繁雑の気保養に、曳船の仮の一人ずみ、ほんの当座の手伝いと、頼まれた。
— 泉鏡花 『雪柳』 青空文庫
即ち酷寒酷暑に於ける従事、或いは虫害その他についての繁雑な手当て、緻密な観察、時間的に不規則な労働に服す等の種々の場合に、努力しなければ中途で止める状態になることも間々ある理屈で、換言すれば好んで為すと云っても、その間には好ましくない事情が生じるようなことは人生に有りがちな事である。
— 幸田露伴 『努力論(現代訳)』 青空文庫
そして宋儒の「万物一太極、一物一太極、一本万殊、一実万分」等の説を、「その文は繁雑でその道理は解り難い、中庸に既にその意味の掲げられて有るのを知らないのである。
— 幸田露伴 『一貫章義(現代訳)』 青空文庫
すなわち、能楽の進化の中心を一直線にして云いあらわすと繁雑から単純へ……換言すれば外形的から内面的へ……客観から主観へ……写実から抽象へ……もう一つ突込んで云えば物質から精神へ……という事になる。
— 夢野久作 『能とは何か』 青空文庫
繁雑なる礼法を設け、種々なる儀式を備ふるも、到底 Formality に陥るを免かれざりしなり、到底貴族的に流るゝを免かれざりしなり、之を要するに其の教ふる処が、人間の根本の生命の絃に触れざりければなり。
— 北村透谷 『内部生命論』 青空文庫
兵庫、西宮から大坂間の街道筋は、山陰、山陽、西海、東海諸道からの要路に当たって、宿駅人馬の継立ても繁雑をきわめると言われたころだ。
— 第二部上 『夜明け前』 青空文庫
幕府も、それを知っておりながら、反対論に怯えたり、繁雑な手続きを長々と調べたり――斉彬は、そういう役人、大名、輿論に対して、ただ一人、この部屋で、こうして闘っていた。
— 直木三十五 『南国太平記』 青空文庫