嶮崖
嶮崖
名詞
標準
文例 · 用例
どこかの山中の嶮崖を通る鉄道線路の夜景を見せ、最後に機関車が観客席に向かって驀進するという甚だ物々しいふれだしのあった一景は、実は子供だましのようなものであった。
— 寺田寅彦 『マーカス・ショーとレビュー式教育』 青空文庫
淵の上にはこの数日見馴れて来た嶮崖が散り残りの紅葉を纏うて聳えて居る。
— 若山牧水 『みなかみ紀行』 青空文庫
ことだけを理由にしても、私が、こゝに至れば、指揮者となり号令者と化して、奮ひ立たなければ、浅間しい内乱が生ずるより他に道のない嶮崖に私達は到達したわけであつた。
— 牧野信一 『川を遡りて』 青空文庫
森を三つばかり越えた嶮崖の一端に西洋風のホテルがあつた。
— 牧野信一 『スプリングコート』 青空文庫
かけ上る駒の蹄に踏み散らす雲霧のあはひを見れば一歩の外己に削りたてたる嶮崖の底もかすかなることおそろし。
— 正岡子規 『かけはしの記』 青空文庫
座敷は南向きで嶮崖に臨み、眼下に稻田が開けて、野末の丘陵、更に遠く連山の起伏に對するあたり、成程月や星を觀るにはいい場所であらうと思はれた。
— 若山牧水 『鳳來寺紀行』 青空文庫
削り下した嶮崖の中に一筋の繩のきれが引つ懸つた形にこびりついてゐるその村の下を流れる一つの谷があつた。
— 草鞋の話旅の話 『樹木とその葉』 青空文庫
一軒は野邊山が原のはづれ、千曲川に臨んだ嶮崖のとつぱなの一軒家で、景色は非常によかつた。
— 草鞋の話旅の話 『樹木とその葉』 青空文庫