艶色
えんしょく
名詞
標準
文例 · 用例
――※、鮠、鮴の類は格別、亭で名物にする一尺の岩魚は、娘だか、妻女だか、艶色に懸相して、獺が件の柳の根に、鰭ある錦木にするのだと風説した。
— 泉鏡花 『古狢』 青空文庫
……類なき艶色、前の日七尾の海の渡船にて見参らせし女性にも勝りて)……と云って……(さるにても、この若き女房、心|頑に、情冷く、言わむ方なき邪慳にて、)とのっけに遣ッつけたから、読んでいて吃驚すると、(茶を一つ給われかし、御無心)と頼んだのに、(茶屋はあちらに。
— 泉鏡花 『河伯令嬢』 青空文庫
※々、轟々、轣轆として次第に駈行き、走去る、殿に腕車一輛、黒鴨仕立華やかに光琳の紋附けたるは、上流唯一の艶色にて、交際社会の明星と呼ばるる、あのそれ深川綾子なり。
— 泉鏡花 『貧民倶楽部』 青空文庫
われはサンタの艶色を憶ひ起して、心目にその燃ゆる如き目なざしを見心耳にその渇せる如き聲音を聞き、我と我を嘲り我と我を卑めり。
— IMPROVISATOREN 『即興詩人』 青空文庫
もう一つには、もともと、この事件は自分が発頭人ともいうべきであって、塩冶の内室の世にたぐいなき艶色を自分がうかうかと吹聴したればこそ、師直の胸に道ならぬ恋の種を播いたので、下世話にいう「無い子に知恵をつけた」その責任は自分にもある。
— 岡本綺堂 『小坂部姫』 青空文庫
しかもそれが却って彼女の艶色を増して、玉のような面はいよいよその光りを添えて見られた。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
千枝太郎は驚かされたように再びその顔をじっと見あげると、この衣笠という娘の顔かたちが玉藻によく似ているとはいうものの、その艶色におのずから相違が見いだされた。
— 岡本綺堂 『玉藻の前』 青空文庫
その一つから艶色無類でトロイ戦争の基因たるヘレネー女、今一つから、カストルとポルクスてふ双生児が生まれたからだとあるが、天鵞形の神に孕まされて生んだ卵は天鵞卵で鶏卵でなかろう。
— 鶏に関する伝説 『十二支考』 青空文庫