閼伽桶
あかおけ
名詞
標準
文例 · 用例
先っきの若い男が「や、閼伽桶」と叫んだ。
— 森鴎外 『百物語』 青空文庫
所謂閼伽桶の中には、番茶が麻の嚢に入れて漬けてあったのである。
— 森鴎外 『百物語』 青空文庫
おまんらは細道づたいに、閼伽桶をさげ、花を手にし、あるいは煙の立つ線香をささげなどして、次第に墓地へ集まりつつあった。
— 第二部上 『夜明け前』 青空文庫
彼は街道に自動車を待たせておいて、閼伽桶と花束をもって狭い赤土の道を入っていった。
— 松本泰 『秘められたる挿話』 青空文庫
案内顔に先に立って墓地の方へ通って行こうとする年とった寺男、閼伽桶と樒の葉、子供等の手に振られる赤い紙に巻かれた線香の煙、何一つとして岸本の沈思を誘わないものは無かった。
— 島崎藤村 『新生』 青空文庫
庫裏に人気が無かったので井戸端の閼伽桶へ水を汲み自分で提げて墓地へ行った。
— ―破獄の志士赤井景韶― 『国事犯の行方』 青空文庫
姿ばかりは墨染にして、君が行末を嶮しき山路に思ひ較べつ、溪間の泉を閼伽桶に汲取りて立ち歸る瀧口入道、庵の中を見れば、維盛卿も重景も、何處に行きしか、影もなし。
— 高山樗牛 『瀧口入道』 青空文庫
寺男が閼伽桶と線香とをもってきて、墓の苔を掃っている間、私たちは墓から数歩退いて、あらためて墓地全体をみやった。
— 堀辰雄 『花を持てる女』 青空文庫