顰め面
しかめつら
名詞
標準
文例 · 用例
両手で差上げたから巻莨を口に預けたので、煙が鼻に沁む顰め面で、ニヤリと笑って、「へい、わざッとお初穂……若奥様。
— 泉鏡花 『白花の朝顔』 青空文庫
あの時の君の顰め面ってなかったぜ。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
多少の落着きは保っていたので、私はプレストンが差出してくれたのを取り、誰の目にもつかずにそれを自分の外套の上にかけ、にらみ返すような強い顰め面をしながらその部屋を出た。
— WILLIAM WILSON 『ウィリアム・ウィルスン』 青空文庫
この考えを懐く人たちの想像する哲学者は、蒼白な顰め面をした、人生や自然におけるよきもの美しきものに無頓著な、すべての現実的に対して懐疑的もしくは厭離的になった人である。
— 三木清 『語られざる哲学』 青空文庫
次に彼女は、狐の面をつくるために唇を突き出し、両耳を吊りあげて、最も嫌ひな唐辛子を舐めさせられた時の顰め面をして、極度に細めた眼に非常に勢急な眼ばたきを加へた。
— 牧野信一 『沼辺より』 青空文庫
堪七はさういふ顰め面が自然の顔であつた。
— 牧野信一 『沼辺より』 青空文庫
伯五郎の眼つきと凡そ対照的な堪七の眼蓋の運動と、さう云ふ顰め面であるためか、未だ若かつた癖に皺の夥しく多い黄疸色の顔色に接して、その眼蓋の運動のやうに痙攣的な金切声を耳にしてゐると誰でもが、遺恨のあるなしに係はらずその頬つぺたをつねるか、或ひは擽り殺してやりたいやうな衝動に駆られるといふことだつた。
— 牧野信一 『沼辺より』 青空文庫
痘瘡の跡のある横太りの女中は巫山戲てなほからかはうとしたが、彼の不愛嬌な顰め面を見るときまりわるげに階下へ降りた。
— 嘉村礒多 『業苦』 青空文庫