舞い狂う
まいくるう
動詞
標準
文例 · 用例
毎夜、毎夜、万朶の花のごとく、ひらひら私の眉間のあたりで舞い狂う、あの無量無数の言葉の洪水が、今宵は、また、なんとしたことか、雪のまったく降りやんでしまった空のように、ただ、からっとしていて、私ひとりのこされ、いっそ石になりたいくらいの羞恥の念でいたずらに輾転している。
— 太宰治 『めくら草紙』 青空文庫
いかなる詩聖の言葉のかげにも又いかばかり偉大な音楽家の韻律のかげにもたとえ表面は舞い狂う――笑いさざめく華かさがあってもその見えない影にひそむ尊い悲しみが人の心を動かすものであろう。
— 宮本百合子 『千世子(二)』 青空文庫
舞い狂う吹雪に面をそむけた左膳が、一眼をなかば見開いて左腕に坤竜を握ったまま身体を斜めに法恩寺橋の袂にさしかかった時だった。
— 乾雲坤竜の巻 『丹下左膳』 青空文庫
空を舞い狂う樹木は矢のような勢で、混濁の中に墜ちて行く。
— 原民喜 『夏の花』 青空文庫
ところが、「牡丹圏」になると、突如、絢爛たる大舞台の幕が切って落され、咲き乱れてる牡丹の花を背景に、大猩猩が存分に舞い狂う。
— 豊島与志雄 『「草野心平詩集」解説』 青空文庫
僕は階段の途中に凝縮して、まだ響き残っているその慌しい跫音を耳にしながら、ただ一陣の突風が階段の下に舞い狂うのを見たのみであった。
— 坂口安吾 『風博士』 青空文庫
猛火の舞い狂う道に向って一足歩きかけると、女は本能的に立ち止り群集の流れる方へひき戻されるようにフラフラとよろめいて行く。
— 坂口安吾 『白痴』 青空文庫
夜半に風が吹きだしたとき、雪はやんだらしいが、風が強いために、積った粉雪が舞い狂うので、しばしば視界を遮られ、なかなか道がはかどらなかった。
— 山本周五郎 『ちくしょう谷』 青空文庫