糸巻
いとまき
名詞
標準
文例 · 用例
小風は、可厭、可厭…… 幼い同士が威勢よく唄う中に、杢若はただ一人、寒そうな懐手、糸巻を懐中に差込んだまま、この唄にはむずむずと襟を摺って、頭を掉って、そして面打って舞う己が凧に、合点合点をして見せていた。
— 泉鏡花 『茸の舞姫』 青空文庫
……にもかかわらず、烏が騒ぐ逢魔が時、颯と下した風も無いのに、杢若のその低い凧が、懐の糸巻をくるりと空に巻くと、キリキリと糸を張って、一ツ星に颯と外れた。
— 泉鏡花 『茸の舞姫』 青空文庫
――糸塚さん、糸巻塚ともいうんですって。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
」「ええ、それで、糸塚、糸巻塚、どっちにしようかっていってるところ。
— 泉鏡花 『縷紅新草』 青空文庫
アイヌの郷土細工の糸巻から、弟の着物と似合ひの色糸を見付けて、針の孔へ通した。
— 岡本かの子 『過去世』 青空文庫
目は、ぱつちりと※いて居ながら、敢て見るともなく針箱の中に可愛らしい悪戯な手を入れたが、何を捜すでもなく、指に当つたのは、ふつくりした糸巻であつた。
— 泉鏡花 『蠅を憎む記』 青空文庫
鳴るのが聞えるのを嬉しがつて、果は烈しく独楽のやう、糸巻はコトコトとはずんで、指をはなれて引出の一方へ倒れると、鈴は又一つチリンと鳴つた。
— 泉鏡花 『蠅を憎む記』 青空文庫
小な胸には、大切なものを落したやうに、大袈裟にハツとしたが、ふと心着くと、絹糸の端が有るか無きかに、指に挟つて残つて居たので、うかゞひ、うかゞひ、密と引くと、糸巻は、ひらりと面を返して、糸はする/\と手繰られる。
— 泉鏡花 『蠅を憎む記』 青空文庫