攪
攪
名詞
標準
文例 · 用例
太平の夢はこれらのエンジンの騒音に攪乱されてしまったのである。
— 寺田寅彦 『烏瓜の花と蛾』 青空文庫
しばらくして、境が、飛び上がるように起き直ったのは、すぐ窓の外に、ざぶり、ばちゃばちゃばちゃ、ばちゃ、ちゃッと、けたたましく池の水の掻き攪さるる音を聞いたからであった。
— 泉鏡花 『眉かくしの霊』 青空文庫
それでいて蔬菜が底の方からむらなく攪乱されるさまはやはり手馴れの技倆らしかった。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
これを撥ね除け攪き壊すには極端な反撥が要った。
— 岡本かの子 『食魔』 青空文庫
攪き廻されて濃くなった部屋の空気は、サフランの花を踏み躪ったような一種の甘い妖しい匂いに充ち、肉体を気だるくさす代りに精神をしばしば不安に突き抜くほど鋭く閃かせた。
— 岡本かの子 『母子叙情』 青空文庫
こんなに執拗に取組まなければ愛情の吐け口を得られない兄弟の運命や性格の原因をどこへ持つて行つたらいゝか、その詮索をするのさへいま/\しいほど、心を不快に底から攪き廻された。
— 岡本かの子 『過去世』 青空文庫
あつさりしてゐて」 桂子は余りに多く、余りに一時に攪拌された心を始末しかねて、言葉少なに電灯をつけ、そこらの食器を片付けて、持つて来た金包みを小布施の敷布団の枕の下へ押し込み、「兎に角、せん子を当分こつちへ世話に寄越しときませう。
— 岡本かの子 『花は勁し』 青空文庫
かがり火は、薪木の性と見え、時折、ぷちぱちと撥ね、不平そうに火勢をよじりうねらすが、寂莫たる天地は何の攪き乱さるる様子もなく、天地創ってこのかた、たそがれちょうものの待つ、それは眠るにも非ず覚めたるにも非ざる中間に於て悠久なるものを情緒に於て捉えようとするかれ持前の思惟の仕方を続けている。
— 岡本かの子 『富士』 青空文庫