瞑々
瞑々
名詞
標準
文例 · 用例
やがて渾沌瞑々として風の鳴るのを聞くと、果しも知らぬ渺々たる海の上を翔けるのである。
— 泉鏡花 『妖魔の辻占』 青空文庫
囂々として、騒々として、漠々として、瞑々として、恢々として、何ともつかぬ無数の肉音声が、蒼い蒼い向うの麗光の空から吼えとどろいて来た。
— 北原白秋 『フレップ・トリップ』 青空文庫
江戸ッ子でないものは人でないような扱いをしていたのは、一方からいうと、江戸が東京となって、地方人に蹂躙せられた、本来江戸児とは比較にもならない頓馬な地方人などに、江戸を奪われたという敵愾心が、江戸ッ子の考えに瞑々の中にあったので、地方人を敵視するような気風もあったようだ。
— 淡島寒月 『江戸か東京か』 青空文庫
自分を瞑々の間に東京へ引き留めたのは、實は全く幻影に過ぎぬかも知れない、澄子さんとの戀だと思つた。
— 久米正雄 『受驗生の手記』 青空文庫
たちまち四辺は瞑々たる白色の中に沈み、いまにも天外に吹き飛ばされようと思うばかりに、その風のすさまじさ劇しさ、コン吉は凍える指に力を集め、必死と岩にしがみつき、「オーイ、オーイ」と呼びかけると、はるか上の方からは途切れ途切れにガイヤアルの血声。
— アルプスの潜水夫 ――モンブラン登山の巻 『ノンシャラン道中記』 青空文庫
振返れば、天地すべて瞑々だ。
— 吉川英治 『新・水滸伝』 青空文庫
無情な天は、そこからあがる黒煙に、陽を潜め、月を隠し、ただ暗々瞑々、地上を酸鼻にまかせているのみであった。
— 群星の巻 『三国志』 青空文庫