軒々
軒々
名詞
標準
文例 · 用例
蝮が多くて、水に浸った軒々では、その害を被ったものが少くない。
— 泉鏡花 『絵本の春』 青空文庫
角の蕎麦屋から一軒々々、きょろりと見ちゃ、毎日おなじような独語を言わあ。
— 泉鏡花 『白金之絵図』 青空文庫
北浜の株屋を後場が引けてから一軒々々まわって、おびただしい数の電話を消毒したあとなど、手がしびれた。
— 織田作之助 『わが町』 青空文庫
一軒々々飾窓を覗きまわったので疲れ、ひきかえして戎橋の上で佇んでいると、橋の下を水上警察のモータボートが走って行った。
— 織田作之助 『放浪』 青空文庫
――川通りの夏の夜店へ遊びに出ては、一軒々々指を啣えて欲しい欲しいと餓鬼みたいさ。
— 泉鏡花 『卵塔場の天女』 青空文庫
が、嘘か眞か、本所の、あの被服廠では、つむじ風の火の裡に、荷車を曳いた馬が、車ながら炎となつて、空をきり/\と※つたと聞けば、あゝ、その馬の幽靈が、車の亡魂とともに、フト迷つて顯はれたかと、見るにもの凄いまで、この騷ぎに持ち出した、軒々の提灯の影に映つたのであつた。
— 泉鏡太郎 『十六夜』 青空文庫
唯見ると、渡過ぐる一方の岸は、目の下に深い溪河――即ち摺上川――の崖に臨んで、づらりと並んだ温泉の宿の幾軒々々、盡く皆其の裏ばかりが……三階どころでない、五階七階に、座敷を重ね、欄干を積んで、縁側が縱に繞り、階子段が横に走る。
— 泉鏡太郎 『飯坂ゆき』 青空文庫
刑事は葛飾を警察に留めて置いて、葛飾の住居のある郊外迄出かけてゆくと、その界隈の自動車屋と云う自動車屋を一軒々々残らず聞いて廻った。
— 渡辺温 『遺書に就て』 青空文庫