屠所の羊
としょのひつじ
表現
標準
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文例 · 用例
」 二十五 恩になる姫様、勇美子が急な用というに悖い得ないで、島野に連出されたお雪は、屠所の羊の歩。
— 泉鏡花 『黒百合』 青空文庫
と下枝は引立られ、殺気満ちたる得三の面色、こは殺さるるに極ったりと、屠所の羊のとぼとぼと、廊下伝いに歩は一歩、死地に近寄る哀れさよ。
— 泉鏡花 『活人形』 青空文庫
途中で溝の中の蛙をイジメたり、白|蓮華を探したりして、道草を喰い喰い、それこそ屠所の羊の思いで翁の門を潜ると、待ち構えている翁は虎が兎を掠めるように筆者を舞台へ連れて行く。
— 夢野久作 『梅津只圓翁伝』 青空文庫
なんといわれてもののしられても、打ち据えられさえしても、屠所の羊のように柔順に黙ったまま、葉子にはまどろしく見えるくらいゆっくり落ち着いて働く愛子を見せつけられると、葉子の疳癪は嵩じるばかりだった。
— 有島武郎 『或る女』 青空文庫
彼は屠所の羊のやうに、泣き出しさうな硬ばつた微笑を、強ひて作りながら、美奈子達の後から乗つた。
— 菊池寛 『真珠夫人』 青空文庫
けれども志免警部と三人の刑事は私よりももっと失望したらしく、先程の元気はどこへやら、屠所の羊ともいうべき姿で、私の前に来て思い思いにうなだれた。
— 夢野久作 『暗黒公使』 青空文庫
屠所の羊どころじゃねえ。
— 夢の久作(夢野久作) 『人間腸詰』 青空文庫
そうして一方は元気よく、勝誇ったように……一方は屠所の羊のように、又は死の投影のように頸低れて、気絶した仲間を扶け起し扶け起し、月光の真下で別れ別れになって行った。
— 夢野久作 『戦場』 青空文庫