灌
かん
名詞
標準
文例 · 用例
南を受けた堤の雪は紙のやうに薄くなつて、彈力のある枯草の葉や、赤い實をつけた野茨や、鼠柳の灌木らしい短かい幾條もの枝が現はれて出てゐる。
— 有島武郎 『春』 青空文庫
さてベランダの上にだが見れば銅貨が落ちてゐる、いやメダルなのかアこれは今日昼落とした文子さんのだ明日はこれを届けてやらうポケットに入れたが気にかゝる、月は※荷を食ひ過ぎてゐる灌木がその個性を砥いでゐる姉妹は眠つた、母親は紅殻色の格子を締めた!
— 亡き児文也の霊に捧ぐ 『在りし日の歌』 青空文庫
それから暫らくのこと、私の勤務先は、日本橋の三越デパートメントの裏で、日本銀行と向いあったところだが、その建物の中で私たちが占めている室からは、太田道灌以来の名城を、松の緑の間に、仰ぎ見られるので、はじめて松樹国の日本に落ちついた気がした。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
太田道灌の「富士の高根を軒端にぞ見る」という歌は、余りに言い古されているとしても、江戸から富士を切り捨てた絵本や、錦絵や、名所|図会が、いまだかつて存在したであろうか。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
私は平原の草野において、山百合の花を愛し、深山の灌木において、もっとも白花石楠花を愛する。
— 小島烏水 『不尽の高根』 青空文庫
本街道から製材所の横を切れると、もう既に裾野であるが、富士のそれとは違って、乾き切った砂漠で、セージと通称する白ッ茶けた草や、マンザニタと呼ばれるところの、灌木などが茂って、馬蹄の砂が濛々と舞いあがるのには、馬上|面を伏せて、眼をねぶるばかりであった。
— 小島烏水 『火と氷のシャスタ山』 青空文庫
玉石といっても、数十年かまたは数百年か、そこにじっとして坐っていたものだから、草だの灌木だのが、その上に生い茂り、苔むしていた。
— ――生きる為に―― 『山谿に生くる人々』 青空文庫
その隧道を通って、この湖水の水が沼津の方に落ちまして、二千石|乃至三千石の田地を灌漑しているということを聞きました。
— 内村鑑三 『後世への最大遺物』 青空文庫