田畠
でんばく
名詞
標準
文例 · 用例
見る見る、目の下の田畠が小さくなり遠くなるに従うて、波の色が蒼う、ひたひたと足許に近づくのは、海を抱いたかかる山の、何処も同じ習である。
— 泉鏡花 『春昼』 青空文庫
一度でも忘れると、掌をめぐらさず、田地田畠、陸は水になる、沼になる、淵になる。
— 泉鏡花 『夜叉ヶ池』 青空文庫
田地田畠持込で養子が来たんです。
— 泉鏡花 『縁結び』 青空文庫
が、田畠野の空を、山の端差して、何となく暗ながら雲がむくむくと通つて行く。
— 泉鏡太郎 『神鑿』 青空文庫
家の無い家族のみじめさは、田舎の家や田畠を持っている人たちにはわかるまい。
— 太宰治 『親友交歓』 青空文庫
のんどりとして静寂な田畠には、土の湧出て、装上るやうな蛙の声。
— 泉鏡太郎 『続銀鼎』 青空文庫
六十一 汽車が武蔵の平野へ降りてくるにつれて、しっとりした空気や、広々と夷かな田畠や矮林が、水から離れていた魚族の水に返されたような安易を感じさせたが、東京が近くにつれて、汽車の駐まる駅々に、お島は自分の生命を縮められるような苦しさを感じた。
— 徳田秋声 『あらくれ』 青空文庫
三千代の父はかつて多少の財産と称へらるべき田畠の所有者であつた。
— 夏目漱石 『それから』 青空文庫