顔以
かおもっ
名詞
標準
文例 · 用例
会社員生活をしているから社会がみえたり、心境が広くなるわけではなく、却って月給日と上役の顔以外にはなんにもみえません。
— 太宰治 『虚構の春』 青空文庫
……おおん、あの、朝顔以来、内でこれの出たのはそうですなあ、大掃除の時、出入りの車夫に振舞うたばかりですよ。
— 泉鏡花 『白花の朝顔』 青空文庫
或は交際の都合に由りて余儀なく此輩と同席することもあらんには、礼儀を乱さず温顔以て之に接して侮ることなきと同時に、窃に其無教育破廉恥を憐むこそ慈悲の道なれ。
— 福沢諭吉 『新女大学』 青空文庫
誘惑的な身体と顔以外には、なんら特別の才能があったわけではない。
— 牧逸馬 『戦雲を駆る女怪』 青空文庫
彼の整つた鼻も、顎も、さかしい素人の顔以外の物を形づくつて来る。
— 折口信夫 『戞々たり 車上の優人』 青空文庫
そのためにちよつとのあいだその平凡な顔が、バイルズのやつれた顔以上に、暗い不吉な感じに見えた。
— THE CRIME OF THE COMMUNIST 『共産主義者の犯罪』 青空文庫
どうやら警部の赤い重々しい無関心な顔は、血の気のない悩みきつた秘書の顔以上に、不吉な運命の仮面に似ているようであつた。
— THE GREEN MAN 『緑色の人』 青空文庫
鉄漿などと云う化粧法が行われたのも、その目的を考えると、顔以外の空隙へ悉く闇を詰めてしまおうとして、口腔へまで暗黒を啣ませたのではないであろうか。
— 谷崎潤一郎 『陰翳礼讃』 青空文庫