掻巻
かいまき
名詞
標準
文例 · 用例
明後日出来るのかい、とお蔦がきりもりで、夏の掻巻に、と思って古浴衣の染を抜いて形を置かせに遣ってある、紺屋へ催促の返事か、と思うと、そうでない。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
寝床の上に端然と坐って、膝へ掻巻の襟をかけて、その日の新聞を読む――半面が柔かに蒲団に敷いている。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
天鵝絨の括枕を横へ取って、足を伸して裙にかさねた、黄縞の郡内に、桃色の絹の肩当てした掻巻を引き寄せる、手が辷って、ひやりと軽くかかった裏の羽二重が燃ゆるよう。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
トタンに次の書斎で、するすると帯を解く音がしたので、まだ横にならなかった主税は、掻巻の襟に両肱を支いた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
活々した、何の花か、その薫の影はないが、透通って、きらきら、露を揺って、幽な波を描いて恋を囁くかと思われる一種微妙な匂が有って、掻巻の袖を辿って来て、和かに面を撫でる。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
早瀬は、甘い、香しい、暖かな、とろりとした、春の野に横わる心地で、枕を逆に、掻巻の上へ寝巻の腹ん這になって、蒲団の裙に乗出しながら、頬杖を支いて、恍惚した状にその菫を見ている内、上にたたずむ蝶々と斉しく、花の匂が懐しくなったと見える。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
颯と花環が消えると、横に枕した夫人の黒髪、後向きに、掻巻の襟を出た肩の辺が露に見えた。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
枕についた肩細く、半ば掻巻を藻脱けた姿の、空蝉のあわれな胸を、痩せた手でしっかりと、浴衣に襲ねた寝衣の襟の、はだかったのを切なそうに掴みながら、銀杏返しの鬢の崩れを、引結えた頭重げに、透通るように色の白い、鼻筋の通った顔を、がっくりと肩につけて、吻と今|呼吸をしたのはお蔦である。
— 泉鏡花 『婦系図』 青空文庫
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掻巻(かいまき)とは、袖のついた着物状の寝具、防寒着のこと。
出典: 掻巻 — ウィキペディア / CC BY-SA 4.0