憶出
憶出
名詞
標準
文例 · 用例
時には憶出したやうに超然と粧ひさへした。
— 中原中也 『校長』 青空文庫
「ハテそうしては彼娘が……」ト文三は少しく萎れたが……不図又叔母の悪々しい者面を憶出して、又|憤然となり、「糞ッ止めても止まらぬぞ」ト何時にない断念のよさ。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
今も今母親の写真を見て文三は日頃|喰付けの感情をおこし覚えずも悄然と萎れ返ッたが、又|悪々しい叔母の者面を憶出して又|熱気となり、拳を握り歯を喰切り、「糞ッ止めて止まらぬぞ」ト独言を言いながら再び将に取旁付に懸らんとすると、二階の上り口で「お飯で御座いますヨ」ト下女の呼ぶ声がする。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
嬉しそうに人のそわつくを見るに付け聞くに付け、またしても昨日の我が憶出されて、五月雨頃の空と湿める、嘆息もする、面白くも無い。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
それでも尚お強情を張ッて行かなければ、「貴君と御一所でなきゃア私も罷しましょう」とか何とか言て貰いたかッた……「シカシこりゃア嫉妬じゃアない……」 と不図何か憶出して我と我に分疏を言て見たが、まだ何処かくすぐられるようで……不安心で。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
依て今までのお勢の挙動を憶出して熟思審察して見るに、さらにそんな気色は見えない。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
シカシさすがに心細いと見えて、返えす書に、跡で憶出して書加えたように薄墨で、こう申せばそなたはお笑い被成候かは存じ不申候えども、手紙の着きし当日より一日も早く旧のようにお成り被成候ように○○のお祖師さまへ茶断して願掛け致しおり候まま、そなたもその積りにて油断なく御奉公口をお尋ね被成度念じ※。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫
跡で文三は暫らくの間また腕を拱んで黙想していたが、フト何か憶出したような面相をして、起上ッて羽織だけを着替えて、帽子を片手に二階を降りた。
— 二葉亭四迷 『浮雲』 青空文庫